まもなく創立100周年を迎える『帝人株式会社』。日本初のレーヨンメーカーとして創業の後、最先端の化学技術力と研究開発を通じて合成繊維から医療事業へと展開。「ソリューション提供型事業体」を目ざし時代とともに変化と拡張を遂げてきた。
現在の柱は「高機能素材」「ヘルスケア」「IT」。特にヘルスケア分野では、社長直轄の新たなプロジェクトも始動している。「生活者の健康を応援したい」というテーマのもと、「食事」「運動」「睡眠」と3つの領域を強化中。
今回は、『帝人』初の食品素材「スーパー大麦」の営業やプロモーションを担当されている吉﨑さと子さんに、成長を実感したエピソードとご自身の職業観を尋ねた。
入社の決め手は人事部長。その人柄に魅かれて
【Q】『帝人』入社の動機と経緯は?
そもそも理系の道に進んだのは、母の脚を治してあげたいと思ったのがきっかけなんです。子どもの頃の運動会のとき母子で走る競技があったんですが、うちの母は脚が悪くて一緒に走れませんでした。それがとても悲しくて…。そんな思いをする子どもたちが将来いなくなればいいなと。技術的な領域でなんとか多くの人の治療に貢献できたら…とずっと思っていました。
『帝人』に興味を持ったのも再生医療に取り組んでいたからです。この会社に入ったら、母を治すことに寄与できるんじゃないかと。
もちろん企業としての業容や方向性には強く共感しました。でも、入社を決意した最終的な決め手は、弊社の人事部長の人柄でしょうか。合同セミナーに参加したときの人事部長の行動にすごい感銘を受けたんです。
複数の企業の人事担当の方が並んで、会社の紹介や学生の質問に答えていくといった形式のセミナーだったんですが、そこには別の企業の入社2年目の男性も採用担当として登壇していました。当然ながら不慣れな様子で、質問にもしどろもどろで。それを見かねた『帝人』の人事部長が、その男性と学生とのやり取りに入ってフォローしたんです。
他社の人事の方は、自分の会社がいかに良いかのアピール優先だったんですが、そうして自分のことばかりじゃなくて、他人のこと、特に困っている人のことを咄嗟にさらっと気遣えるって、とても素敵だなぁと思いました。その場ですっかり惚れこんで思わず応募しました。
先に他の企業をいくつか受けたのですが、「いいことを言わないと」とか「間の抜けたことは言わないようにしよう」とか身構えて取り繕うとどれもなかなか上手くいきませんでしたね。
『帝人』の最終面接は、ほとんどお互いの質問もないまま談笑して終わってしまいました。肩の力を抜いて臨んだのは良かったんですが、なんだか手応えがなくて怖かったです。でも、結局入社できてここにいるってことは、ありのままの自分の雰囲気を良しとしてくださったのかなぁと。相性が悪くなかったんだとしたら感謝です。
技術職から営業職へ。予想外の展開に戸惑いつつも
【Q】入社後の業務は?
2008年の入社です。入社後すぐに研修施設のある愛媛県の松山へ。新入社員全員で2週間の全体研修を受けました。その終了時に配属先が発表されるんです。
大学・大学院と工学系の専攻だったので技術系の職場だとは思っていました。結果は、スマホやパネルディスプレイに使われる素材のポリエステルフィルム用樹脂の研究開発担当に。ただ、まさかの松山勤務でそのまま。勝手に東京に戻れるものと思っていたので、唖然と不安でちょっと複雑な心境でした。
その後の4年間はプラスチックの研究開発に携わりました。用途に合わせて配合成分や分量・温度などを変え、細かいプラスチックの粒をオーダーメイドで製造します。それが、糸やフィルム・ペットボトルといった最終製品になっていくんです。当時は社内の各事業向けに材料を供給する形で仕事をしていました。
そして2012年、東京本社への異動が決まったんですが、なんとポリエステル樹脂の営業課。今まで研究していたプラスチックを社外へ販売するセクションです。プラスチックの営業課というのは、それまでは原料のみを社外に提供する限定的なビジネスの形態だったのですが、プラスチックそのものを広く社外に売るというのは初めての試みでした。
もともと社内の折衝や意見聴取だけでなく、外のお客さまの声を直接聴きたいという気持ちはありました。でも、本格的な営業職というのは全然イメージしていなかったので戸惑いました。営業、特に開発営業と言えば、ひたすら新しい先に電話アポをとって精力的に訪問するイメージで。自分には全然向いていないと思いました。小さい頃から人見知りなんですよ。人の話を聞くのは好きなのですが、積極的に話し掛けたりするのは得意じゃなくて。
それでも、技術部門を担当させてもらった4年間の経験は、すごく営業に活かせた気がします。プラスチックはあくまで最終製品ではないので、特に試作段階では、お客さま側の研究所や工場の方とも、どんな用途のためにどんなものをどう作るか…細かな部分までやり取りをする機会が多いんです。折衝窓口として技術系の方立たれていることも多かったので、痒いところに手が届くようなきめ細かい情報伝達を心掛けるようにしました。技術的な視点からアプローチすると確実に共感度も上がりましたね。
外からのニーズと中のリソースを翻訳的に繋ぐ形でのコミュニケーションにも配慮しました。工場の仕組やラインの有効活用とか工程やプロセスの合理化とか、技術の現場で培った知見を踏まえた提案も少なからずできたかなと。
2014年から1年半余りは、兼務で新しいセンサーの技術営業も担当していました。大学の研究室に行って実験を行いベンチャー企業や研究室と組んで形にして…とますますいろんな接点が増えていって。忙しかったです。
2016年に入って新事業推進本部に異動になり、弊社初の食品素材『スーパー大麦』の営業担当に着きました。ここでは、営業とは言えセクションの規模も小さいので、資料作成や交渉・契約の他、プロモーションまで多種多様なことをやらないといけないんです。展示会のブース設営や当日の運営なども。なかなか大変なんですが、これまでとはまた違ったいろんなスキルが身に付けられるのはとても嬉しいですね。
『スーパー大麦』を食べると体内の善玉菌が活性化されて、腸をすごくきれいにする効果があるんですよ。ぜひ食べてみてください。
「会社」という組織の後ろ盾に気づいた瞬間
【Q】これまでで一番のターニングポイントは?
4年前、営業部門に異動したときですね。
「営業」という全くの未体験ゾーンに慌てました。一方で、会社としてもプラスチックの社外への販売は初めての取り組みで、売り先も売り方も売るモノも、何もきちんと決まっていない状態でのスタート。何もかもが手探りでした。
とにかく、社内の関わりのありそうな部署の方に次々と電話を掛けました。社内の電話帳リストを片っ端から。お尻に火が着いた感じで、もうやるしかないという状態でしたね。
営業について、業界について、ビジネスプランについて…たくさんの方に相談に乗ってもらいました。本当にみなさんが親身になってアドバイスをくださって。部署も違うし直属の部下でもないのに。自分で仕掛けておいてびっくりしました。今思い出してもちょっと泣けます。
あたふたしているのを聞きつけた役職の方からも、営業先や人を紹介していただいたり。営業としての立ち回りや心得なども伝授してもらいました。とても心強かったですね。
この時期に「会社」に対する意識が大きく変わりました。
正直それまでは、会社や組織といった大きな枠組みの中で働いているという感覚が希薄だったような気がします。他部署の方とも業務のうえで必要なときに話すくらいでしたから。でも必死で相談する中で、いろんな部署の人たちが、実は自分にとってのすごい力になってくれてるんだと実感しました。目指すもののために一緒に考えて一緒に動いてくれる「仲間」なんだなぁ、こんなにたくさんの「後ろ盾」があるんだなぁと。
お客さまからのご相談も、自分の部署だけでは解決できないことも多くあります。そんな場合も、他部署の方々と「あっちの繊維を加えたらどうか」「あっちのプラスチックの方がいいんじゃないか」…なんて気軽に意見交換できるようになりました。おかげで奥行きのある対応や提案ができるようになって良かったなと思っています。
最近では「とりあえず、吉﨑に電話してみるか」と、逆に他部署の方からいろいろとお話や問い合わせをいただいたり情報が入ってきたりするようにもなってきました。これは自分の成長にとってもすごくプラスですね。
掘り下げていきたい人と接するおもしろさ
【Q】「これから」に向けての思いは?
多くの人と接点を持つ仕事を続けていきたいですね。ちょっと抽象的かもしれませんが。
お客さまであれ社内の人であれ、相変わらず人の話を聞くのが好きで、その傾向はもっと強くなった気がします。その意味では、今となっては営業というポジションも合っているのかなぁと。理系の出身ではありますが、きっと技術系には戻れないかもしれませんね。
社内の他部署の人たちがやっていることに対しても、感度がすごく高くなりました。各部署が配信しているプレスリリースを読んで気になることがあったら、「これってどういうことですか。教えてください」ってすぐに電話してしまいます。
領域としては、しばらくは今の「食品」のジャンルを続けたいです。
生活者の役に立っていることが、かなり直接的に感じられることがおもしろいです。今も『帝人』の事業の中心はBtoBですが、もっと勉強してスキルを身につけて、新しいBtoC事業でのお手伝いができたらいいなと考えています。
もうひとつは「再生医療」の分野ですね。入社のきっかけとなっている母の脚の治療への思いは今も。
入社当時の『帝人』は、人工関節の分野にはまだ着手していませんでした。ですが最近、人工関節を扱っている企業が『帝人』のグループに入りました。思いを遂げられる可能性がぐっと具体的になった気がしています。しかもオフィスでは、担当の部署が自分の部署のすぐそばにあって。とても気になっています。最終的な着地点としては、その領域にもとても興味があります。
自分の情報、自身のフィーリング
【Q】最後に就職活動に臨む学生にひとこと…
私もそうだったんですが…社名や製品、メディアを通じてなんとなく感じてるイメージにどうしても影響されます。後はネットやSNSの情報などで、企業を理解したつもりになったり、その結果選んでたりしがちじゃないかと。でも、企業を外からちゃんと見られるチャンス、しかもいろんな会社をほぼ同じ時期に詳しく知ることができるのは就職活動の時期ならではだと思います。できるだけ多くの会社を訪ねて、実際に見て聞いて話してみるべきですね。
そのうえで、自分でつかんだ情報と向き合って自分のフィーリングできちんと決める。そんな感じでしょうか。
取材を終えて『帝人株式会社』という企業に対して感じたこと。
そこには、困ったり悩んだりしている人を放っておけない「人思い」で「人好き」な優しい風土が強くある。
これからは自分も少しずつ恩返しです。困っている後輩とかがいたら、いっぱい話を聞いて積極的にサポートしていきたいですね。
そうにこやかに語る吉﨑さんも間違いなくその風土に生きるひとりだ。
企業公式サイト http://www.teijin.co.jp/
採用情報ページ http://www.teijin.co.jp/recruit/