「成長」の瞬間 【「 自信」はここからはじまった。 】
LINEで送る
Pocket

配転経験と現状否定で得た広い視野と新たな目標。本当の「おもてなし」とは?

株式会社ニトリホールディングス

株式会社ニトリ 赤羽店 副店長

辺見 茂行

0_ニトリ_辺見茂行

「お、ねだん以上。ニトリ」のフレーズでおなじみの『株式会社ニトリ』。
1967年「似鳥家具店」を創業。企業理念は「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」。創業者の思いが詰まったその理念を、『ニトリ』では“ロマン”と呼ぶ。
商品企画から販売までのプロセスを一貫して手掛ける独自のビジネスモデル「製造物流小売」を武器に、31期連続で増収増益。2013年~2022年の10か年計画において、グローバル化と事業領域の拡大をテーマに掲げ、現状否定と改革を重ねている。
社員への教育投資は、上場企業平均の約5倍。広い視野と柔軟な思考を持ち、次代を担う「ゼネラリストなスペシャリスト」の育成に注力する『ニトリ』。
今回の主役は店舗運営部に所属し、現在は「赤羽店」で副店長として活躍する辺見さん。自身のターニングポイントやニトリ独自の教育制度についてお話を伺った。
※2018年5月21日現在


1_ニトリ_外観

この人と夢を追い掛けたい。熱いロマンに惹かれて決意した入社

 【Q】入社の経緯は?

学生時代はずっと野球をやっていました。大学までの十数年、それなりの大きな夢を持ちながら。特に寮に入っていた高校時代は、年に10日程度しか家に帰らないほど、寝ても覚めても“野球づけ”の日々でした。
就活の際は、業界や職種には特にこだわらず幅広く捉えていましたが、野球くらい熱中できて夢を追い続けられるような仕事がしたいという譲れない軸はありましたね。

『ニトリ』と出会うきっかけを作ってくれたのは、大学の一年先輩でした。その先輩は、すでに『ニトリ』への就職が決まっていて。「いい会社だから受けてみたら?」と声を掛けてくれました。
説明会での会長の講話に衝撃を受けました。熱いロマンと明確なビジョンが心にグサッと刺さって。と同時に「この人と一緒に夢を追い掛けたい!」と強く思いました。
「アメリカから学んだコーディネートを日本で実現することで社会貢献がしたい」という会長のぶれない姿勢はもちろん、この会社なら本当にそれが実現できるのではないかという可能性を感じたことが、『ニトリ』に惹かれた大きな理由です。

【Q】入社されてからのお仕事は?

2010年に新卒入社して、最初は地元の大阪にある「堺中央環状店」に着任し、店頭の業務を担当していました。その後、同じ大阪府内の「堺大仙店」と「平野店」、2012年の秋には大阪から離れて千葉県銚子市の「旭店」と4つの店舗を経験しました。当時は年に1回のペースでの異動で、職場環境が目まぐるしく変化していました。

2013年の夏に、店舗運営部の開店・改装推進という、新店のオープンや既存店の改装に携わる部署への配属となり、店舗の設営担当としてのキャリアが始まりました。北海道や名古屋…全国各地を飛び回る日々でした。
翌年以降は成果を認めていただけ、リーダー、チーフへとステップアップするとともに、中国で同様の部署を設立する際にはノウハウを伝える形で出張もしていました。
現在は店舗に戻り、「赤羽店」で副店長として働いています。

 2_ニトリ_赤羽店A

今までの当たり前は捨てる。「現状否定」をしてこそ掴んだ新たなノウハウ

【Q】ターニングポイントは?

そうですねぇ。ターニングポイントとしては、ふたつある気がします。

ひとつ目は、開店・改装推進のリーダーになった時ですね。
開店・改装推進は、商品搬入からオープン日までの、商品陳列や演出の設計、店内の情報機器の設置などを担い、店舗がオープンするまでの流れをつくるのが主な業務です。スペースを確保する店舗開発部、商品構成や棚割りを決める商品部。その間に入って店づくりを実現していく…いわば実働部隊ですね。ニトリにとって、新店出店はロマン実現のために大きな意味を持ちます。そのため、開店までの3週間程度の短期間で、店舗ごとの課題に対して、実現方法を考え動き、テナント側との商談を重ね、オープン時に店舗の従業員にバトンタッチします。例えるならば、ゴールイメージが描かれた「絵」を受け取り、それを店舗という「形」にするのが私たちの仕事です。

2014年、リーダーに昇級して間もなく「プランタン銀座店」(現「マロニエゲート銀座店」)のオープンに携わりました。百貨店内という初めての出店形態で、今までの郊外型店舗で培ったノウハウが使えず非常に苦労しました。
商品搬入ひとつとっても、郊外型店舗では自由に使えていた搬入ルートが、百貨店ではいろいろな制限があって、こうも違うのかと。「全てが一からか」と気が遠くなりそうでした。今までの当たり前を捨て、行動していくしか道はありませんでした。弊社で言う「現状否定」ですね。そのことばの意味を身をもって痛感しました。
一瞬心が折れ掛けはしましたが、店舗運営部のゼネラルマネージャーに、「君たちは売り場を作るプロ。お客さまにとって良くなるように、どんどん改善提案していきなさい」と励まされ、「思い切ってやろう!」とチーム一丸となって挑むことができました。そこからはひたすら「現状否定」と「改善提案」の繰り返しでした。

また、初めて部下を持ったのもこの時期です。自分がリーダーシップをとっていかなければいけない環境で、「対話」することが何より重要だと学びました。「自分を理解してもらうためには、まず相手を理解すること」。直接話を重ねていくうちに、それぞれのメンバーの気持ちが少しずつ同じ方向に向いていく手応えが感じられて。その瞬間「いけるな」と。リーダーとして人を引っ張っていく自信が湧いてきたのを覚えています。

「銀座店」の開店以降、都内での都市型店舗の出店が加速していますが、大枠の骨組みはこの時に残せていると思っています。そこにさらに改善を重ねているのが「渋谷公園通り店」。まだまだ課題は多いですが、会社として確実に前進できていると実感します。
リーダーとして今までにない新しいノウハウ作りに挑みながら、開店までこぎつけた「プランタン銀座店」での経験は、間違いなく自分を成長させてくれた転機になっていますね。  

3_ニトリ_マロニエゲート銀座店
マロニエゲート銀座店(旧:プランタン銀座店)

求められるスピード感。大きな視野で大胆な改革を起こしていける自分を目指して

【Q】もうひとつのターニングポイントは?

「この時」という明確なものではないのですが、全国各地での出店を重ねていく中で、お客さまに対しての意識が、徐々に、また確実に変化していきましたね。
店舗業務をしていた時から「商品が売れる喜び」は体感していました。ただ、開店までのプロセスを担当したことにより、「来店していただける喜び」や「商品に触れていただける喜び」が加わった感じです。オープン当日の開店前にお客さまが並んでいらっしゃるのを見て、泣きそうになってしまったことも。『ニトリ』の出店をこんなにも楽しみに思ってくださっている、ということに感動しましたね。
地域のお客さまの思いの象徴が「店舗」、そしてその責任者が「店長」…そう解釈できるんじゃないかと。「店長」を目指したいと思うようになりました。
こうした新しい視点や目標を持てたという意味で、これから『ニトリ』で働いていくうえでの重要なターニングポイントになったと思います。

【Q】では、今後の展望は店長?

はい。決して大きなスケールではありませんが、できる限り「経営者」の目線で働いていきたいと思っています。
『ニトリ』のロマンである「住まいの豊かさを世界の人に提供したい」をもう少し細かい次元で考えると、まずはその地域のお客さまの暮らしを豊かにするために、より便利で「買いたい」と思える店舗であること。そのためにも、来店いただけるお客さまに対して、充分な「おもてなし」をしなければと。

来店されるお客様、商品を買いにいらっしゃるお客様の中には、ご自宅での生活において何らかの問題を抱えている方もたくさんいらっしゃいます。楽しく買物ができる店舗運営のための大前提として、そこは強く実感しています。その問題を解決するためにも「接客力の向上」は必要だと思いますね。
「こういう商品はありますか?」と聞かれた時、「取扱いはありません」と答えるのは簡単です。でも、何も解決しません。お客さまとの会話の中で、「何に困っているのか?」「どういう目的で商品を探しているのか?」という背景を聞き出す必要があります。それができて初めて、「これであればそんな使い方もできますよ」「この商品はいかがですか?」と一歩踏み込んだ提案ができます。品揃えだけではなく、こうしたやりとりができることで、地域にとっての「良いお店」になっていけるのではないでしょうか。
『ニトリ』としても、店舗のあり方は重点課題のひとつですし、私自身も日々心掛けてお客さまと接することが必須です。大切な部分だけは、絶対に見失わないようにしなければいけませんね。

4_ニトリ_赤羽店B
赤羽店

【Q】店長の先は?

将来的には、コンサルティング領域の業務をやりたいと思っています。
現在『ニトリ』は大きな変革期にあり、今後1,000店舗、3,000店舗を目指す出店計画を達成するには、労働生産性の向上から物流・商品に至るまで数多くの課題があります。現在の約500店からすると、倍程の数字。どこかで今と違う仕組みを作らなければいけないはずです。
人材育成に関しても同様、1,000店舗なら1,000人の店長、3,000店舗なら3,000人の店長が必要になってくるので、よりスピード感を上げていかないといけません。また、3,000店舗を2,000人、1,500人の店長で運営できる改革も必要と考えます。
この目標を達成するためには、今のやり方を文字通り「現状否定」しながら、大きな視野で大胆な改革を起こしていける人間にならないと。
もっともっと俯瞰的なものの見方・考え方が必要ですし、高度なスキルも身につけないと。正直まだまだ。勉強すべきことがたくさん…です。

5_ニトリ_赤羽店C
赤羽店

常にチャレンジできる環境はキャリアを考えるきっかけに。「配転教育」は自分の将来を開くための扉。

 【Q】一番良かった人材育成の仕組みは?

「配転教育」ですね。
「入社したら必ず配転する」と明言している企業は少ないですが、「自分の将来を開くための扉」だとも聞いていました。本当にその通りだと。
私も入社当時は、開店・改装に携わるとは全く思っていませんでした。でも実は、やってみて初めてそこに大きな楽しさがあることを知り、自分の適性や可能性を見出せたりもする。20代前半の時点で、やりたいことが明確なうえ自己分析ができている状態で企業に入社する人って、本当にひと握りだと思います。ほとんどの人はもっと曖昧な部分を持ちながら、仕事に臨んでいるんじゃないでしょうか。私もそうでした。
社会に出たばかりの時期に、いろんな人との接点を与えてもらえ、いろんな仕事に幅広くチャレンジできる機会があるのは本当に貴重だと思います。その中で、自分は何に向いているのか、どういうことが苦手で克服をしなければならないのかが自然と見えてきます。自身の今後のキャリアをきちんと考えるきっかけ…それが「配転教育」です。私にとっては宝でした。

ローテーションの流れは人によって多少違いますが、ほとんどは約2年から3年の短いスパンで異動します。『ニトリ』には100を超える部署があるので、転職のように全く違うジャンルの仕事に就くことにもなります。店舗から急に商品企画や物流の部門に移ったり、新店舗のための物件取得の仕事になったり。人事異動の時期は不安にもなりますが、その分大きな夢を持てる時期でもあるかと。
仮に希望の部署や職種に配属されたとしても、ずっと居続けることは難しいのですが、配転教育を通して新たな視点を得ると、もっとやりたい仕事が見つかったりもします。「配転教育」は、将来のスペシャリストを目指すための大事な仕組みなんです。

【Q】他に自慢できる教育制度や福利厚生は?

入社2年目から参加できる「アメリカセミナー」です。
会長がアメリカでの研修を通じて「これを日本で実現したい」と思った『ニトリ』の原点を、私たち社員も体感しに行きます。いわば”ロマン”の共有ですね。私もこれまで2度行かせていただきました。
現地ではチェーンストアを視察しますが、アメリカの暮らしを間近で見ると「やっぱりいいな、日本もこうなって欲しいな」と仕事へのモチベーションにつながります。

私が感じた日本とアメリカの違いは、コーディネートと安さです。
店舗のオペレーションを見ても、常に陳列状態が良い。何故日本ではできないのかとも思います。会長がおっしゃっている「日本のチェーンストアは、アメリカに比べ30年遅れている」ということを痛感しました。ただ、30年後よりも早くそこに追いつきたいという気持ちになりましたね。ロマンの共有だけでなく、ビジョンへの意識も高めてくれる研修です。

後は「リフレッシュ休暇」があり、夏期・冬期にそれぞれ有給を含めた長期休暇を取ることが可能です。もちろん役職やキャリア関係なく。「取っていいよ」とお互いに言い合える企業風土もあります。小売業ではちょっと珍しい制度かもしれませんね。これも、自信を持って良い文化だと言えます。

6_ニトリ_アメリカ研修

就職はゴールではなく「スタート」。入社時の躓きを救った上司のひとこと。

【Q】最後に就活生に応援メッセージを

実は入社して半年くらい、躓いてたんです。その理由は、就職活動をゴールにしてしまっていたから。そんなつもりはなかったんですけど、今思うと地に足がついていなかったような気がしますね。そんな自分の苦い経験からも、「これからがスタート」という気持ちを持って入社することが一番良いと思います。

当時、中間採用のフロアマネージャーの方に言われて今も心に残っていることばがあります。
「どの会社でも最初は、ほうきとちりとりしか持たされない。だけど、そのほうきとちりとりでしっかりと結果を出すことを求められる。上司はその姿や取り組む姿勢を見ている。そこでまず“ふるい”に掛けられる。だから、最初が一番大事なんだ。」
目が覚めました。まさにその通りだと思いました。
あの時、あの上司に出会えなかったら、もしかしたらこの会社にいなかったかもしれませんし、どこかでブレーキが掛かっていたはずです。ターニングポイントとしては、これが最初ですね。
まずは、良いスタートが切れるような心の準備が必要です。

もうひとつだけ言うとしたら、仕事選びにおいて自分の希望を完全に叶えるのはとても難しいことです。自分の中で優先する要素を3つくらい持ち、幅をもたせて活動すると良いと思います。
極端な例ですが、どうしても地元で働きたいと思っている人が『ニトリ』に入ったとしても、絶対に叶わないです。地元で働きたいのか、大手に入って大きな夢を追いかけていきたいのか、ベンチャーで挑戦していきたいのか。もちろん、給与面や生活面・環境面も含めて、複数の優先要素を持ち、その中のいくつかとマッチする会社を受けることが非常に重要で合理的なんじゃないでしょうか。そのうえで、夢を持って働けたら本当に素敵です。

7_ニトリ_辺見2

辺見さんの発することばのひとつひとつには強い意志がある。
謙虚で真面目な姿勢の中に見え隠れする熱さ。『ニトリ』というチームの中で、ひたむきに「夢」を追う姿は輝いている。
野球へ注いでいた情熱が、今は仕事に。辺見さんの新たな「夢」の行く末が楽しみだ。

企業公式サイト http://www.nitorihd.co.jp
採用情報ページ http://www.nitorihd.co.jp/recruit/