「成長」の瞬間 【「 自信」はここからはじまった。 】
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やさしいコミュニケーションから生まれる 人にやさしい「働く」環境

株式会社イトーキ

ソリューション開発本部 プロダクトデザイン室

佐藤 宏樹

『明日の「働く」を、デザインする。』
1890年の創業以来、オフィスの進化の歴史とともに効率化と快適性を追求し続ける『イトーキ』。その事業としての視座は、今やビジネス環境全域から地球環境へと拡がる。
提供する製品・サービスの領域も、一般企業のオフィスはもとより、医療・福祉施設、教育・研究施設、公共施設の「空間・環境・場」づくりに展開。オフィス家具のみならず、ICT(情報通信技術)や働き方の提案にも取組みの範囲を拡張し、事業ドメインである「イキイキと価値創造する『空間』『環境』『場づくり』」を提供している。
今回訪ねたのは、製品開発の拠点:プロダクトデザイン室所属の佐藤さん。現在の活躍の起点となった「成長」のターニングポイントとそのバックボーンとなる仕事と社風の魅力について語ってもらった。


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ITOKI Tokyo Innovation Center 『SYNQA』

追い掛けるのは 快適さや使いやすさを包み込む「機能美」

【Q】入社からのこれまでの仕事の経緯を?

大学から大学院とデザインを学んできた中で、就職に向けては家具もしくは住宅機器などのプロダクトデザイン志望で活動を始めていました。
その途中に知人から「オフィス家具の世界はおもしろい」と勧められ、その製品バリエーションの間口の広さに強く関心を持ちました。そこからは業界を絞り込んで、そしてご縁があって…という感じです。

2008年に入社し、新人研修期間を終えてからの約3年半は、オフィスチェアの開発・設計に携わりました。
新製品の開発に参画したのは、『torte』『fulgo』『Vento』『MOVU』などのブランドです。

2012年の1月に、現在のプロダクトデザイン室に移りました。
チェアやテーブルを中心にオフィス家具全般の他にも、学校・図書館などの教育施設の家具の開発にも参加しています。
基本はプロジェクト単位での5~6名のチームプレイ。その中で、商品企画・デザイン・設計と役割を分担しています。私の担当はデザインです。

オフィス家具に求められるデザインのポイントは「機能美」。フォルムとしてかっこいいとか洗練されているとかだけではないんですよね。
使ったときの心地よさや快適性、使いやすさ、便利さの他、耐久性なども考慮されたデザインが必要とされます。
外観の美しさのみを追い掛けるのではなく、素材や構造の理解の上に成り立ったデザインでないと通用しません。正直、難しいと感じることも多いです。でもその難しさが、興味を刺激する部分なんですが…。

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佐藤さんがデザインを担当した製品 『Celeeo』

思ったことが言えるきちんとした関係がないと “いいモノ”は生まれない

【Q】「成長」のターニングポイントは?

ターニングポイントと言えるものがあるとしたら、プロダクトデザイン室に来て初めて、ひとつの新製品の企画を含めたデザインを完全に任されたときですね。
そのプロジェクトの完了とともに、プラスの感情とマイナスの感情が入り混じりました。言いようのない複雑な気分で。

嬉しかったのは、テーマリーダーとしてプロジェクトのスタートから発売までを通してやり切れたこと。達成感がありましたし自信にもなりました。委ねられた範囲が広かったので、責任もプレッシャーも感じましたが、その分やりがいも実感することができました。
とは言え、デザイナーの立場としては、完全に納得し切れていないまま製品を世に送り出してしまったことへの後悔の念も強くありました。
もっと自分の意見をはっきり言えばよかったと。チームメンバー内でキャリアとして一番下だったこともあり、遠慮がありましたね。どこまで言っていいのか躊躇した場面も多々…。今ひとつ踏み込めていなかったです。

「やれるぞ!」という手応えがあっただけに、悔いが残ったことが嫌で、「二度とそんな思いはしたくない」とその時に決心しました。「自分がいいと思ったことを、きちんと言える状態をつくろう」と…。

単に言いたいことを勝手にどんどん言うだけでは、きちんと聞いてはもらえません。心掛けたのは、普段からのコミュニケーションを密にすること。そして、気軽に相談や質問をしたり、自分の意見の根拠もきちんと話したりすることで、小さな信頼を積み上げるようにしました。

特に意識したのは、まず「聞く」ということでしょうか。
相手の意見や言い分を聞き切って、受け入れる部分をきちんと落とし込んで、自分の意見があればそのうえで話す…というスタンスをきちんととろうと思いました。先に受け入れてから出す。会話のメリハリをつけようと。「引いてから押す」ですね。
メンバー同士、目指すゴールは一緒なので、やっぱりすり合わせることが第一だと思います。ましてや自分より経験を積まれた方からの発信は勉強になります。まずは聞かないと。

それともうひとつ。何かを起案する場合に、できるだけ複数プランの準備を課しました。
メンバーからの評価を聞きながら一緒に選ぶことで、ちょっと気持ちのいいコミュニケーションになるんじゃないかと思いました。それに、仮にひとつのプランに決着しなかったとしても、「A案の○○とB案の○○がいい」といった具合に話が拡がります。1案だとどうしても、「○」か「×」の二択で完結してしまいがちです。
複数案の事前準備は大変ですが、いいエクササイズにもなります。自分のこだわりやアイデアのプレゼンの場だと思って前向きにやっています。

結果として、上手くいっている気がします。
今改めて実感するのは、自分が変わることで、周りとの関係や仕事の流れも変わるんだなぁと。『scrum』というアクティブラーニング用家具で2016年の「グッドデザイン賞」もいただきましたが、自分の成果である以上に、関わったみなさんのおかげですね。

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2016年グッドデザイン賞受賞 『scrum』

対象は オフィスを超えて全ての「働く」環境へ

【Q】今後の仕事に向けての思いを?

「働く」環境全体にもっと視野を拡げていきたいですね。
ツールやワーキングスタイルが多様化する中で、働く空間はオフィスだけじゃなくなってきています。家や店舗や公共スペースも。ホームユースの家具ですら「働く」ためのものとも言えます。そんな新しい状況と変化に適応できるものをつくっていきたいですね。使う人の視点や声を大切にして、社内のそれぞれのジャンルの専門家といい連携をとりながら、もっと様々なこともしっかり学んで…。
自分が手がけた製品を使ってもらっている場面を見ると、素直に嬉しいです。本当にやってて良かったと。
プロダクトデザインを通じて、「たくさんの人がより快適に仕事ができる」ことに貢献していきたい…そう思っています。

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「〜したい」=意欲と主体性を大事にする「成長の支援」風土

【Q】育成に関する仕組みや環境は?

階層別研修や選択型研修、選抜型の研修など、仕組みも整っていると思うのですが、一番特徴的なのは「成長支援」というスタンスだと思います。

「人材育成」ではなく「成長支援」ということばを社内でもよく使います。どんなに褒めようと、本人に「成長したい」という姿勢がないと育たないし、「主体は自分たちにある」というスタンスだと思っています。
研修以外の場でも、「自分の頭で考えること」を癖付けることを大切にしていると思います。新入社員でも「自分はこう思うんです」と言える人になって欲しいと、社長もよく言っていますね。

仕組みでいうと、新入社員は入社後配属までの約2か月間、全体での新人研修を実施します。社会人としての基礎から始まり、会社の業容や仕組み・制度を理解し、工場での実習や営業同行もあります。

配属後は、実践型の「OJT」育成をベースに、先輩社員が専属トレーナーとして日常的な面倒を見ます。
その中で、徐々に自分が担当している案件を手伝ってもらいながら、最終的にはスライドしていったり。自分としてはこの「トレーナー制度」がとても良かったです。実務的なことが短期間でたくさん勉強できたし、ちょっとした相談が気軽にできたり、さらっとしたアドバイスももらえたので。

営業では「営業一人前像」をベースに、4年目までの求められる知識やスキルを明確化し、それをもとにした育成を実施しています。
1年目が終わったタイミングでの「ビジネスフォロー研修」では、仕事のスタンスの再確認の他、参加者全員に個人面談も行なっています。

特に新人や若手スタッフ一人ひとりの「学びたい」「早く自立したい」といった意欲をとても大事にしてくれますね。決して押し付けではなく、本人の主体性やチャレンジしたい思いに合わせて周りがしっかり応える感じで。
もちろん、その分自分が「どうしたいのか?」「どうなりたいのか?」を、常に問いかけられていることにもなるんですが。

日々の現場でも、こぞってさりげなく手を差し伸べる…というか、気にかけたりサポートしたりする空気が良さのひとつです。
ひとことで言うと「人がいい」。自然と引き継がれている『イトーキ』らしさの象徴じゃないかと思います。

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取り組みの「幅」×踏み込める「奥行き」=「掛け算」の文化

【Q】会社の「自慢」できるところを?

志望動機のところでもちょっと触れましたが、企業として取り組んでいることの「幅」の広さが何よりも強みだと思います。
例えば、私たちのメインとなるオフィス事業では、企業環境のグローバル化や働き方の多様化、ICTの発展などの結果、オフィスに求められることが大きく変化しています。働く人の創造性をより上げるため、ICTやAIなどのシステムへと事業の領域がどんどん拡がっているので、自分の強みや関心を向けられるジャンルのバリエーションがあります。
もう一方で「深さ」と言うか。自分の職種の場合は特にかもしれませんが、個人の裁量として任せてもらえる範囲も広いので、ひとつの新製品が誕生する最初から最後までを見通せる「奥行き」感もあります。
「幅×奥行き」の掛け算。その結果生まれるステージの多さや膨大なつながりの数が、自分にとっては大きな魅力ですね。

「掛け算」と言えば、何かと何かを組み合わせて新しい活動のフィールドをつくるのが得意な会社です。
例えば、『Ud & Eco style』(ユーデコスタイル)。ユニバーサルデザインとエコデザインを融合させた考え方で、「すべての人が持続的に快適に暮らせる共創社会」を目指そうと。今の『イトーキ』の柱になっています。
また、新しいソリューションとして『Workcise』(ワークサイズ)というものがあります。これは、働きながら健康になろうということで、「work」と「exercise」を掛け合わせています。「働きながらカラダとココロの健康づくり」をテーマに、お客さまへの提案だけではなく、社員自らが効果の実証検分を兼ねて『Workcise』を取り入れています。
企業としてのステージの広がりや柔軟さのベースには、この「掛け算」の文化があるんじゃないでしょうか。

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ITOKI Tokyo Innovation Center 『SYNQA』

最後に、「就活生にひとこと応援メッセージを」と依頼した。

難しいですね。自分の経験的なことでいいですか?
自分の興味や関心のゾーンを広く持っておくことを勧めたいですね。
実際の仕事の現場には、学生の時期には想像もできなかったことがあるし出てきます。自分にとってのストライクゾーンを狭く持ってしまうと、いくつものチャンスを逃す気がするんです。
できるだけ広角のアンテナを立ち上げておく。やりたいことの軸はあっても絞りすぎず余力を持っておく。そうすることで、自分の感度に引っ掛かるものが増えるはずです。そのちょっと面白そうなものを起点に、次の点、その次の点へと繋げて進化していけば、きっと仕事はもっと面白くなる。
そしてそのうちに新しく経験することも、振り返ってみたら実はそのどれもが、どこかで過去の体験や知識と繋がっていることに気づいたりすると、もっともっと面白くなるんでしょうね。

そう笑って答えてくれた佐藤さん。
その視界は広く、懐も深い。文字通り「掛け算」の名人かもしれない。

 

 

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