光を「あかり」としてだけでなく、「熱エネルギー」(赤外線)や「光化学エネルギー」(紫外線)として利用し、新たな光市場を創造する。『ウシオ電機株式会社』のポリシーは、1964年の創業以来不変だ。光源・製品・装置からモジュール・ユニット、そしてシステムへ。半世紀以上に渡りその業域を拡げながら確実に成長を遂げ、安全・快適に貢献するグローバル企業としての確固たるポジションを有している。
光の無限の可能性を追求し、ソリューションを開発・提供し続ける『ウシオ電機』。光の「プロフェッショナル」養成のために運用される独自の仕組み、そしてそれを後押しする環境とは? キャリア開発課:田代さんを訪ねた。
また、育成担当部長・キャリア開発課長を兼任される流郷さんにも同席いただき、人材育成全体における方針や制度についても伺った。
より広く より深く 「光」のソリューションを提供
『ウシオ電機』という名前を知らない方の身近にも、『ウシオ』の光はたくさんあるんです。
光のメーカーですが、一般の電球・照明ではなくプロユースや産業用の光源(ランプ)を開発・販売しています。例えば、コピー機や複合機に搭載されている原稿読み取り用の光源や、映写機やデータプロジェクターに搭載される光源など。
その他にも、これら光源を搭載した装置やユニットも開発・製造しています。光源もしくは装置、どちらかだけであれば取り扱う会社は世界にも数多くありますが、両方を手掛けている企業は稀だと思います。
照らすだけではなく、新しい技術で、洗浄する・固める・描く・加熱するなど光の多様な機能を引き出しカタチにする。光の可能性を追い掛けながら進化する。世の中の課題に光ソリューションで応える。それが『ウシオ』です。
私たちは今後の展開を見通しながら、現在事業の領域を大きく3つに分類しています。
まずは「エレクトロニクス」。
パソコン・携帯電話・液晶テレビ・携帯電話などのIT・通信・AV機器から自動車・電車・銀行ATMといったインフラ、近年発展目覚ましいAIまで、産業や生活を支えるものの心臓部には例外なく「半導体」が存在します。その半導体は、本体の性能アップに伴い、より高集積かつ微細化が求められてきました。
『ウシオ』も、より波長の短い光源の開発やそれを活かした露光装置の開発を進めることで、そのニーズに対応してきましたが、今後もますます高精度なものへの期待は高まります。さらなる技術革新の波を最新の光技術で迎え撃つ。それが「エレクトロニクス」領域での使命です。
次に「ビジュアルイメージング」。
これは近年の映像技術の急速な発展とともに拡張してきた領域です。プロジェクションマッピングをはじめとしたエンターテイメント市場、デジタルサイネージなどのコミュニケーションといったジャンルも、開発を担うべき重要なフィールド。一般生活者にとってより身近な世界へも展開しています。
そして「ライフサイエンス」。
本格的に事業として確立したのが十数年前、これからのフィールドです。
例えば「医療」の世界。これまで薬品や薬など化学の力で対処してきたことを光で解決しようとしています。光は自然界にも存在し、安全でクリーン。きちんとした使い方をすればダメージも少なく、人間にとって非常に有効なものです。薬事の規制などのハードルもあり、まだまだ研究の余地は多くありますが、病気の早期発見や初期治療にも貢献できるよう、市場をグローバルに見据えながら開発を進めています。
(田代)
無限の可能性が拡がる仕事に期待される「客観性」と「協調性」
光には、まだ解明されていないこともたくさんあって奥行きのある深い世界です。
光そのものの可能性同様、弊社の可能性も無限。そう自負しています。
これまで以上に「光のできること」を追求し、地球規模のテーマである「環境」問題なども視野に入れながら、問題をひとつひとつ確実に解決していけたらいいなと。
また経済も社会も、競争や変化は劇的に加速しています。複雑かつ大きな動きに対して、多角的に見極めながら先を読んで課題化する。優先して解決すべきテーマを絞り込む。そんな力が、企業としても個人としてもより問われていくことになるんでしょうね。
例えば、周りで起きていることを自分ごととして捉えたり、自分の役割やポジションをきちんと認識したりする客観性。そしてソリューション開発に向け、仲間と尊重し合いながら一緒に取り組む協調性。それがこれからの『ウシオ』に求められる人材の必要条件だと考えています。
(田代)
最初が大切。早期活躍を後押しする入社初期段階での成長支援
16年4月は10名、17年4月には15名の新卒採用者を迎える予定ですが、時代の変化や16年4月に改訂した人事制度に伴い、人材育成の方向性や教育・研修制度も見直しを進めています。
そのひとつが『新入社員研修』です。これまでは、営業・管理系で約4か月、技術系の場合は約8か月をかけて「丁寧に、より多くの知識を習得してもらう」ことを主旨としていましたが、このたび「育成のスピードを上げ早期活躍を期待する」という方針に切り替え、研修期間を約2か月に短縮し、配属後のフォローアップを視野に入れた継続的な育成を強化することにしました。
これに伴い、配属後の育成ステージを、「研修で学ぶ」(Off-JT)、現場での「実践で学ぶ」(OJT)、さらに計画に対する進捗と2年目以降に向けての課題化を再研修で「振り返る」(FOLLOW-UP)の3つのステップに分けました。これらをひとつのサイクルとして運用し、「学生から社会人へのマインドセット」「ウシオ電機の一員としての自覚を持つ」「主体的に考え動く」の3項目を1年目のゴールとして設定しています。
また、1984年から『シスター・ブラザー制度』も継続して推進しています。
先輩社員がマン・ツー・マンで新入社員につき、1年間業務を一緒に見ていきます。交換日記のようなレポートのやりとりを通して、日常的な疑問や質問・困ったこともフォローや指導をしながら、成長をサポートしていく仕組みです。
シスターやブラザーとなる社員も、自分が新入社員の時に面倒を見てもらっているので、当時相談したかった不安や悩みも理解できるし、経験値を活かしてタイムリーにアドバイスできるようです。新人・先輩双方にとっていい勉強になっているんじゃないでしょうか。
従来に比べて早い時期での現場デビューとなりますが、人事担当としては「手は離しても目は離さず」…入社初期段階での新人とのコミュニケーションも積極的に増やしながら、違う角度でできるだけのバックアップをしていきたいと。より充実した成長促進環境づくりに向け、細部に渡っての検討と改善を心掛けていこうと思っています。
(田代)
変化には変化を。人事制度とともに人材育成を再体系化
企業理念に込められた「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させること」という考えの通り、中期経営計画の中でも、「人材育成」は最重要課題として挙げています。
基本方針である「仕事=経験を通して人は成長する」の具体化として、3つのテーマが設定されました。「社員のステージに合わせたアサインメントと経験から学ぶサイクルの構築」「個人の成長段階にマッチした計画的・意図的な育成」「管理職の育成力の強化・支援」。
その最も典型的な施策が、2年前のトップ交代を機に導入された『ヤングエグゼクティブ・プログラム』です。
目的は、ウシオグループの未来をリードする次世代リーダーの育成。20~30歳代社員を対象とし、現在第2期目となりますが、約20名が参画中です。メンバーは、自薦もしくは事業部長からの推薦のうえ面接を経て選出されました。
「高度なビジネススキルの獲得」「リーダーシップの養成」「グローバルな視座の育成」、そして「より経営に近い視点での会社理解」を軸に学習のカリキュラムを組んでいます。
何よりも、若い世代にとってキャリアパスのためのチャンスが拡がること。そして公募を前提としているため、その機会を自ら掴みにいくことを大事にした制度ですね。
チャンス・機会という面では他にも。
異動における自己申請ができる環境があります。もちろん面接や審査のうえで決定されるため絶対ではないのですが、「目標管理制度」の一環として実施される上長との個人面談の場で発信できるようにしています。
また部門で必要としている人材と社員ニーズとでマッチングをはかる社内公募制を導入し、自ら手を挙げてキャリアを掴むことも奨励しています。
加えて、やや変則的ではありますが、個人として社長に直接申告できるという制度もあります。自身のキャリアについてや所属部署の課題についての相談や上申という形で認められていますね。
人材育成体系の再構築も踏まえ、これらは時代の変化に応じた新しい組織・マネジメントの体系化を見据えての動きです。
社会や市場の様々な変遷の中で、いかに個人が能動的に学び変わるか。仲間と切磋琢磨しお互いの学びを高めるか。そのための環境と場を会社として提供しようとしています。
大きなポイントはふたつでしょうか。
ひとつは「意欲」を尊重すること。
プロになりたい。組織に貢献したい。新たな経験を積みたい。学習の場が欲しい。何よりもそんな前向きさに応える仕組みを今後もより整備していきたいですね。
そして「国際力」。
今や弊社の売上8割が海外です。グローバルな人材をいかにして育てていくか。グローバル・スキルの底上げは、全社的に避けて通れない優先課題です。
(流郷)
組織力の源は社員間の日々のリレーションにあり
経営の方針として、社内のコミュニケーションを促進することにも強く意識が注がれています。
『ランチ de コミュニケーション』はそのひとつ。社長・事業部長などの経営層と一般社員数名が、お昼ごはんを一緒に食べながらカジュアルにコミュニケーションを取る…といった感じです。組織として進めていること・経営に関する質問から、仕事に対するスタンスや趣味・習いごとなど日常的なことまでフランクな雰囲気で。普段はなかなか聞くことができない話題で盛り上がったりする貴重な時間ですね。
また風通しの良い企業風土をつくっていこうと社員自らの提案で実施をしているのが『ワールドカフェ』という取り組みです。
これは、一般社員から管理職層まで年齢・性別・役職・職種など関係ない社員が集まり、その回ごとの特定のテーマについてざっくばらんに対話をするというもの。同じ事業所で働いていても話をしたことがない、顔を知らない人がいる…なんてこともよくあることですよね。これを機会に自らが社内ネットワークをつくっていくことができ、仕事上での困りごとや質問も気軽にできるようになって。かなり好評です。
本社にある『ホワイエ』という場所も、イベントや来客がない限り開放されています。執務エリアとは違ってリラックスした雰囲気のつくりになっていて、終業後に有志で楽しそうに「利き酒会」や「パブリックビューイング」をやったりしています。
またクラブ活動のような文化体育会(文体)や職場コミュニケーションといったものにも補助があったり、チームワーク醸成にはとても理解のある会社だと思いますね。
(田代)
周りを巻き込める力、一緒にやりたいと思わせる人柄に期待
採用に向けての期待する人材像ですか?
そうですね。これまでの話の総集編的になるかもしれませんが…。面接などの場面を通じて、自分の評価として優先していることがいくつかあります。
自発的に行動できそうか? いろんな変化に柔軟に対応できそうか?
そして最も重視しているのが、周りを巻き込んでいける求心力や調整力がありそうか?
ビジネスで勝ち残っていくためには、ひとりの力では限界があり、いろんな人たちとWinWinの関係をきちんとキープしていく必要があります。人と上手く関われる力は、チェックポイントであり大きく期待するところですね。
(田代)
確かに…。この人と一緒にやりたい、着いていきたいと思われるキャラクター、共感されるスキルは、組織の中ではすごく必要な要素です。
そのためには、志や強い思いを持っていることが大事であると同時に、人の話もちゃんと聞ける受容性も同じくらい大切だと思います。バランスですね。そのような人材のやる気を引き出し一人ひとりの力を活かしていくには、周りがそれ以上の受容性を持って迎えるべきなんでしょうね。育てる風土もこれまで以上にもっと整えていかないと…。
(流郷)
取材の最後に、就活生へのメッセージをお願いした。
自分たちの頃に比べて圧倒的に情報量が多いから。ここ数年お目に掛かる就活生の皆さんは、知識も豊富だし優秀で対策も充分にできています。ただ残念なのは、その分個性や特徴が見えにくい感じがしますね。
きっと、どの企業の人事担当の方も同じだと思うんですが、マニュアル通りの型にはまった自己PRでは興味も抱きにくいです。もう少し本音を見抜こうと掘り下げて質問したりすると、しどろもどろだったりもして。(田代)
そうですね。当事者として難しいのは理解できるんですが、お会いする人の多くが、均質感と同時に萎縮しているというか、はみ出すのを恐れて小さくまとまっている感じがして。なんだか楽しそうじゃないなぁって。(流郷)
もっと「姿勢」や「意欲」を見たいなって思います。強みと同じくらい弱みも自覚していて素直に発信できるとか、弱みがあったとしてもそれをどうやって克服しようとしているかをちゃんと伝えてくれるとか。就職面談は長いお付き合いのスタートになるので、もうちょっと本当の自分を出してもらえたらなぁと。こちらもそれを受け止める許容量を持ってお会いしているつもりなので。(田代)
できれば、学生である今、就職活動をしている今を、いっそ「楽しんでほしい」って思いますね。表現の仕方も含めて、もっとオープンに自分らしさを出して向き合ってもらえる方が魅力的に映りますよ。きっと…。(流郷)
やや厳しめの応援ながらも、明るく和やかな掛け合いで締めくくっていただいたおふたり。
その間口は広く、懐は深い。
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