『au』ブランドでお馴染みの『KDDI株式会社』。2016年度からの新たな事業運営方針として「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を掲げる。
従来の通信サービスを基盤としながらも、食品・日用品の販売、生命保険・損害保険・住宅ローンなどの金融商品、さらには電気や決済、IoTといった幅広い分野へとサービスの提供領域を拡げている。
今回は、大きな転換期を迎える『KDDI』における採用方針と人財育成のポイントを聞く。訪ねたのは、コーポレート統括本部 総務・人事本部 人財開発部 採用・教育グループ 課長補佐の仙石さん。ご自身の経験を踏まえた仕事観についてもお伺いした。
積み上げたノウハウが次のステージの扉を開く
弊社は2016年度から2018年度までの期間における中期目標を設定しています。事業運営方針は「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」。お客さま視点で商品・サービスを提供する「ライフデザイン企業」を目指して変革を進めています。
具体的な事業戦略としては大きく3つです。
まずは事業の柱である「国内通信事業の持続的成長」。
足元では各社の端末やサービスの同質化が進んでおり、今後は『au』ブランドをいかに持続的に成長させていけるかが企業としての大きな課題となります。
かねてから「3M戦略」という事業戦略を進めてきています。3Mとは「マルチユース(Multi-Use)」「マルチデバイス(Multi-Device)」「マルチネットワーク(Multi-Network)」の略。LTEやひかり回線など各種のネットワークを駆使し、「au ID」をお持ちのお客さまに、スマホやタブレットなど様々なデバイスで、ビデオ鑑賞や読書など多彩なコンテンツを楽しんでいただく複合的な戦略です。
2016年度以降も、この戦略をさらに深めつつ、国内通信事業の売上、いわゆるID(お客さまの数)とARPA(お客さま一人あたりの売上)の最大化を図り、より実効性の高い提案を推進しています。
また、法人のお客さまに関しても、CRM(顧客関係管理)を徹底し、頼りになるパートナーとしてビジネスに貢献できる提案をどんどん強化していく方針です。
ふたつめに、新たな経済軸である「au経済圏の最大化」。
これはスマホ・ケータイとインターネットサービスを軸に、食品や日用品、電気、生命保険、損害保険、住宅ローンなど、『au』ユーザーが幅広いサービスを利用できる仕組みです。直近では、「au HOME」というスマホを使ってテレビやクーラーなどご家庭の家電品を操作できるサービスも始まりました。お客さまのライフステージに応じて、提供する商品・サービスももっともっと進化させていかなければなりません。
今後の展開としては、「auスマートパス」会員が利用できるオンラインサービスと全国2,500の「auショップ」の連携を加速させます。オンラインとオフラインを組み合わせたオムニチャネル化でシナジー効果を生み出す構想です。「ライフデザイン企業」を目指すうえでの中核となる戦略ですね。
3点めに「グローバル事業」。この事業は大きくふたつの領域に分かれています。
一方は「グローバルコンシューマー事業」。簡単に言うと海外における携帯電話事業の拡張です。
2015年にミャンマーの国営通信企業「MPT」とジョイントオペレーションという形で携帯事業をスタートさせました。最近ではモンゴルの「モビコム」という会社を連結子会社化するなど、着実に拡大を続けています。
もう一方は「グローバルICT事業」。海外企業のデータ管理を24時間365日体制で対応しています。ヨーロッパではブランドとしての認知度も高く、『KDDI』は知らないけれど『TELEHOUSE』は知っているという方も多くいらっしゃいます。セキュリティの高さと施設の耐震性が高く評価され、現在世界13の国や地域、24都市、48拠点以上で展開が進められています。
人財育成のポイントは「お客さま視点」と「主体性」。そして「革新性+創造力」へ
繰り返しになりますが、会社としては通信企業からライフデザイン企業への変革を目指し、お客さまのライフステージに応じた様々なサービスを提案して、お客さま体験価値の向上を推進していく方針です。市場が成熟し、商品・サービスの同質化が進展する環境下においては、お客さまに選んでいただける企業になる必要があります。
そのためには、自らの強みを徹底的に磨き上げ、あらゆる分野において、お客さまの期待を超える商品・サービスをいち早く提供していくことが求められます。
その意味で、人財育成の面においても「お客さま体験価値」の観点は、特に重視しています。
お客さまの立場に立って行動できるようになること。入社3年目までにこのスタンスを徹底して理解し自分自身のものにしてもらいます。このサービスの基盤となる考え方は、最初に身につけておかなければ、後から補填するのはなかなか難しいんです。
新入社員には、お客さまと実際に接する「お客さま体験研修」を必ず配属前に実施します。
お客さまの視点を具体的に体感し理解してもらうためです。「auショップ」での店頭オペレーションやコールセンターでの受電、法人顧客への同行など、2週間~3週間程度、お客さまと何かしらの直接接点を充分に持ってもらうようにしています。また、同時に入社後の3か月間は、『KDDI』社員として求められる考え方、社会人マナーや事業内容、ICTのテクニカルなスキルなども学んでもらっています。
相手の立場やものの見方・感じ方に一歩踏み込み寄り添うために必要なこととして、「主体性」があります。その大切さを実感してもらうための取り組みのひとつとして、内定者向けの「企業PR動画」をつくるといった研修もあります。
新入社員が数名のチームに分かれて動画づくりを完結させ、発表会での社員の投票で順位もつけています。コンテンツや構成を考えたり、社内のいろんな人たちにインタビューを依頼したり、企画の段階から撮影・編集まで全てを自分たちでやってもらいます。自分たちで自発的に考え主体的に取り組むことでアウトプットが生まれる。そして結果は他との比較のうえ評価される。その社会人として必須かつシビアな一連の流れを、身を持って体験してもらっているんです。
「お客さま価値体験」を追求し実現していくためには、お客さま視点と主体性に加え、さらに「革新性」や「創造力」というスキルが必要になっていきます。基礎を養った後は、実践を積みながら、能動的に多くの人と関わり繋ぎ、お客さまにより喜ばれる新たなサービスを開発していく。そんな人財に成長してもらうのが理想ですね。
今、『KDDI』は大きな転換期を迎えています。非通信領域にいかにビジネスを拡張していけるか、ますます多様化する市場のニーズに対していかにハイレベルで斬新なサービスを提供できるかが、今後の大きなカギとなります。IoTを活用した「au HOME」などの新しいサービスがスタートしていますが、こうした次のステージの価値を生み出していくことができる人財をちゃんと育てていくことが、企業にとっての最優先課題なんだと思いますね。
マネジメントのスキルアップを見据えた「ジョブローテーション制度」
総合職の社員には「ジョブローテーション制度」の中で様々な仕事を経験してもらっています。
入社後4年目から7年目までの間に、原則として異動します。全く異なる事業部を経験することで、いろんな側面から物事を見て考えることができるようになってもらえるよう期待しています。将来的に管理職としてマネジメントを担っていくうえでも、この幅広い視野はとても重要です。人財育成のための大事な仕組みのひとつですね。
最近の新入社員の傾向として、大学の専攻を活かした初期配属を希望する人が多いことが挙げられます。早い時期から専門性を極めたいという気持ちが強いみたいですね。
ただ、どの企業もそうだと思いますが、業容を拡げつつある弊社の場合は特に、多種多様な専門領域の集合体として成立しているので、個人の担当する仕事の領域はあくまで一部分です。仮に、特定のジャンルで専門性を深め早く結果を出したとしても、大きな視座からするとそれは成長のごく一部。だから急いで自分の専門性にこだわることなく、いろんな部門でいろんな業務の経験を積みながら成長していってもらいたいと思います。
私自身も、3年前に人事部へ異動したときはかなり戸惑いがありました。
その前の営業の業務に携わっていた際は、目の前のお客さまに喜んでいただけたとか、売上が上がって会社のためにもなっているとか、自分が頑張ったことに対してのわかりやすい達成感や見返りがあってすごく好きだったんです。
一方で、HR(ヒューマンリソース)の仕事は目に見える成果がなかなかわかりにくくて。ちょっと悩んだ時期もありました。それでも、会社説明会や採用の流れの場で、自社の魅力を学生さんにしっかりと伝え、理解してもらい納得してもらうことに努力をするといったことを経験するうちに、感じ方が随分と変わりました。入社の意思表示をしてもらえた方の笑顔が、自分にとっての成果なんだと。
採用、そして教育という業務を通じて、会社にとって重要な「人財」を豊かにするプロセスを、企画から運営まで担えることが今はとても楽しいです。自分たちの工夫次第で結果も大きく変わります。やりがいがありますね。
そのうえ、営業のときの経験が今の仕事の中で確実に生きているなって強く実感します。失敗もあったうえで身についた、人との接し方についての成功法則やビジネスに対する押さえどころや感覚などが、確実に役に立っています。どの部署に異動したとしても、根本的な仕事に対する姿勢や進め方のノウハウは変わらないのかもしれませんね。
短期的視点×中長期的視点でのキャリアパス具体化をサポート
会社説明会などで学生さんの話を聞いていると、就職先を選ぶ基準が会社から「人」にシフトしているのを感じます。企業そのもののスペックではなくて、入社前に接点を持った先輩社員の人柄が決め手になることも少なくないようです。弊社に入社した社員からもそのような声はよく聞きますね。
そんな傾向を考慮しつつ、選考前の自社説明会では「キャリアミーティング」という座談会形式のイベントを実施しています。ここでは、若手社員と学生さんに志望動機や実際の業務内容について、ざっくばらんに対話してもらっています。参加した学生さんからは「親近感が湧きました」と言ってもらえて好評ですね。一方で、このイベントは社員側の若手メンバーにとっても良い刺激になっているようです。説明するために企業理解を深めたり、改めて自分自身を見つめ直したりするためのきっかけになっているみたいですね。
加えて今年は、複数のマネージャーに、事業ビジョンや事業戦略について講演してもらう「プレミアムキャリアミーティング」という説明会も初めて開催しました。社員と接して弊社に興味を持った学生さんが、次の段階として中長期的に入社後のキャリアパスを描けることを目的としています。
いずれにせよ、こうした新たな試みを含め、一層『KDDI』への理解を深めてもらい、もっともっと興味を持ってもらえたら嬉しいですね。経済状況や学生さんの志向も毎年変化します。ルーティーンで同じ活動をしていては、採用も難しくなるばかりです。これからもどんどん新しい取り組みにチャレンジしていきたいですね。
失敗を恐れずに主体性を持って一歩踏み出す
就活生の方へ応援メッセージですか?
そうですね、どんな状況でも自分が得た情報に、自分なりの考えや意見を加えて発信したり行動したりして欲しいですね。一旦取り込んだものに、自分自身の仮説や思いを込めることで、アウトプットの質は全然違ってきますし、そこに主体性が感じられることで、周りからの評価も変わると思います。言われたことを鵜呑みにする、ただやるのではなく、何事も積極的な姿勢で取り組んでもらいたいですね。
その結果として、失敗したりするかもしれませんが、恐れずに一歩踏み出すことに頑張って欲しいです。社会人になっても、失敗の先にこそ必ず成長がありますから。失敗も含めて、若い時にいろいろ経験してたくさん考えた方が人脈も広がって、社会人人生は間違いなく楽しくなると思いますよ。少なくとも私はその方が好きですね。
積極的な行動とその結果の失敗は自らの糧になる。仙石さんの熱い思いが伝わってくる。
今、「ライフデザイン企業」として大きく変わろうとしている『KDDI』。社員一人ひとりに根付く「お客さま第一」のスタンスと「革新」を追求するモチベーションは、世の中をどのように変えてくれるのか、期待が膨らむ。
企業公式サイト http://www.kddi.com
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