起業は2005年。通信回線の販売代理から始まり、今ではWeb上でブロードバンドを中心としたインフラサービスの提供で年商100億超企業に成長した『株式会社オールコネクト』。
激しく動く通信業界の中で「変化を起こしていく」ことをめざす。それまでの価値観や固定観念に抗いながら、試行錯誤を厭わず次々と革新的なサービスを市場に送り出している。
お客さまを笑顔にして、「社会をにぎやかに!」することが企業としてのミッション。そう語る岩井社長に、その前向きな事業経緯とこれからの経営ビジョンを聞いた。
マイナスとプラスの思いの交錯。起業は紆余曲折の結果の選択肢
「中学生の頃から起業しようという思いは漠然とありましたね。親や先輩を見ていて、仕事をすること・会社に勤めることが楽しいものだという感覚がなかったんです。むしろ辛そうだと思っていました。どうせなら、発明家になってすごいものを開発して特許を取るか、自分のやりたいことがやれる社長になるか。今思えばいかにも子供っぽいですが、絶対に他の人とは同じようにならない…みたいな反骨精神みたいなものを強く抱えていましたね。」
工業系の大学に進学するため出身の岐阜から福井へ。在学中にブロードバンドの訪問販売のアルバイトに携わった。
指示されたことをこなす、言われたことに応える。なんだか面白くない。結局最初の仕事は、予想通りなんとなく辛かった。やっぱり…と思いながらの毎日。
そんなつまらないことが、続けていくうちに少しずつ変わっていく。「これって楽しい」と思えることが増えてきた。
新しい商品やサービスを、きちんとメリットを説明して勧めると、それなりにいい反応が返ってくる。お客さまの悩みに応えられるよう、自分なりに一生懸命調べて考えて工夫して提案してみると、思っていた以上に喜んでもらえる。自分起点で動くことで得られる充実感…そんな小さな体験の積み重ねが最初のスイッチを入れた。
「『何がかっこいいのか?』という基準が変わっていった気がします。できなかったことができるようになる。難しい課題をクリアしていく。仕事も主体性を持って取り組めば楽しいしかっこいい。一方で、世の中に価値を提供しない、何も生み出さずに消費するだけの人生は『ダサい』と思うようにもなっていました。」
その後、就職活動の時期を迎え、周りに倣って会社訪問を始める。いろんな企業を見た。だが、残念ながら当時の自分の基準を満たしてくれる職場には巡り会えなかった。そして改めて意を決する。ふたつめの本気スイッチ。
起業しよう。社長になろう。そして、『オールコネクト』は、北陸の地:福井でスタートする。
「自分のやりたいことをやりたい形でやるには、やっぱり自分で会社を起こすしかないと思いました。ネットワークを基盤にした事業にしようと考えた時点で、拠点は東京や都市部で…という選択がなくなりました。4年間住んでとても気に入っていたし、今の取締役で、当時アルバイト先の社員だった古市がパートナーとして創業に協力してくれることになったし、福井で立ち上げようと。卒業と同時に念願の起業です。」
「この頃、ひとつ大きな錯覚をしていましたね。会社を起こして、自分のしたいことを思いっきりやって軌道に乗れば、自分は働かなくてもいいんじゃないかって。完全に間違っていました。会社を安定した形で運営していくのは本当に大変です。とんでもなくエネルギーが必要ですし、社長が一番仕事をしないとダメですね。今ですか? もちろん面白いですよ。仕事は。」
もうひとつ、今に繋がる学生時代のエピソードを話してもらえた。
「一週間の合宿型のインターンシップに参加したんです。社長のカバン持ちをしながら、受講と並行してビジネスモデルを考え、最終日に自分が設計したビジネスプランを社長に提案するという企画でした。その時一緒だったメンバーが優秀な有名校出身者ばかりで、プレゼンもディスカッションも明らかに自分が一番劣っていることを思い知らされました。発表内容のクオリティも低いし、全然上手くしゃべることができないし。衝撃的でしたね。それまで自分が“できる”と思っていたものを、全て捨てざるを得ませんでした。すごく悔しかったですが、一気に目線も上がりました。彼らに負けないように頑張らないと。そのメンバーとは今でもいい付き合いをしています。自分にとっての大切な人脈です。」
「変化」は自ら起こすもの。その結果たどり着いたインフラ事業
営業拠点としての利便性から、東京にも支社を設けている。コールセンターは東京・大阪にもある。だが、マーケティング・デザイン・システムなどの機能の大半は福井の本社に置く。これまでも、これからも、ホームグラウンドは福井。
通信回線の販売代理事業をスタートに、その後数々の試行錯誤があった。
サービスの範囲を拡げる思惑でいろんなものを販売した。段ボールなどの資材から暖簾や外国語の学習アプリまで取り扱ったが、どれも思ったようには火が点かなかった。
「きれいなWebサイトと広告の運用、そしてコールセンター機能。後はシステムがきちんと整備できていれば、何でもできると思っていました。でも違うんです。インターネットビジネスという仕組みの中でも、商品によって必要な知見やノウハウが異なるんですね。いろんな事業部や子会社も立ち上げましたが、結局は軌道に乗りませんでした。事業としての領域を『インフラ』に特化しよう…という決断は、いくつもの失敗から学んだ結果です。」
「現在、若干異色のジャンルがあるとすれば『保険』。ただ、生活者のライフスタイルをより合理的に変えていくことに貢献したい…という視点では、テリトリー内だと考えています。」
こうして、ユーザーにとっての「インフラ」整備が事業の根幹…と大きく舵を切ったのが約6年前。実はその頃にきっかけとなるふたつの事件に遭遇する。
ひとつは震災。
「SNSをはじめとした新しい通信機能が、緊急時や日常生活に大いに役立つと社会的に認識された。それが東日本大震災の時でした。ネットワークをきちんと活かすことが大きな価値提供になる。スマホの普及率も急速に伸びた時期でもあり、ここがタイミングだと思いました。」
もうひとつは損失。
「震災の直後でした。事情があって、当時の売上の7割近くを占めるメインクライアントの仕事を失ってしまいました。もちろん経営的にも大打撃で、起死回生の一手が必要になりました。MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の取り扱いを決めたのがこの時期です。」
「ここぞという時に『変化』できるかどうか? 状況に応じて革新していくことの強さこそが、経営に求められることなんだと実感しましたね。同時に決定的な得意分野を持つことが大事だと。いろんなことに手を拡げる前に、まずは自分たちの絶対領域をつくり他からの参入障壁を築くことも思い知らされました。通信やインフラ系の分野に専業化しよう。大きなターニングポイントでしたね。」
「そのためにも『実力』をつけようと思いました。まだ周りがあまり手を着けていない領域だったとしても、ロックオンした以上はとにかく調べて勉強して経験を積み重ねて。今は仮想通信事業として20万人を超えるお客さまにご利用いただけるまでになりましたが、その礎は、状況の変化に流されることなく自ら『変化』を起こしていくこと。そしてそのために誰にも負けない力をつけること。そこに尽きますね。」
『モバレコ』を生活基盤の一大プラットフォームに
あっという間にスマホが標準化し、IoTや人工知能も急速に進化を遂げる。通信業界、そしてインターネットビジネスは常に動いている。大手通信企業ですら不安定な要素を多く抱える。去年当たり前だったことが今年通用しなくなることも数々。事業としてのリスクは決して小さくない。
「厳しいのは自社だけではないはずです。リスクが大きいということは、逆に『チャンス』としても大きいということ。小さい会社が大きな企業に勝てるとしたら不安定な環境だからこそ。そう思っています。成長するのもノウハウや経験則を貯めるのも、この安定しない土壌の賜物だとも感じています。」
「経営理念の最初にも掲げていますが、競争に勝つためにチャレンジし続けることが何よりも大事です。『まずはやる』、一番最初にやる。電力自由化の際に、どこの企業よりも先に代理店契約を獲りに動きました。次はガスですね。」
格安のスマートフォン・SIMカードの販売や話題のモバイル機器の最新情報を提供する『モバレコ』は、『オールコネクト』の運営。今や月間400万PVを有する人気サイトだ。
岩井社長の構想は、やはりひとつ先を行く。
「MVNOのモバレコ店もオープンしました。スマホやそのためのサービスをスマホそのもので買うことは、既に何ら違和感のない時代です。」
「最終的には、『モバレコ』を暮らしのインフラの一大プラットフォームにしたいんです。通信に始まり、電気・ガス、その先には水道とかも。生活の基盤となるものが全て選べるようになる。生活のインフラ市場は、合計すると20兆円にもなるはずです。この巨大なマーケットでの買物を、ユーザーにとってもっともっと便利で機能的なものにできたらと。スペックを詳しく理解したり比較したりできるうえに、購入・契約も可能。書籍なら『amazon』、ファッションなら『ZOZOTOWN』、レシピなら『cookpad』、そして安心の暮らしなら『モバレコ』。それが理想です。」
「これまでは製品やサービスの各ブランドを尊重し、『オールコネクト』をあまり表に出さずに運営してきましたが、そこも方針を変えていくつもりです。今後は、ユーザーに、『モバレコ』で買った・契約した…という感覚にもっとなってもらいたい。『モバレコ』の新しいブランディングというか、自分たちの看板=『モバレコ』…に強くこだわっていきたいですね。そのためには、プラットフォームとしての整備の努力やアイデアももっと必要です。VRやAIも組み込んでみたいし、コールセンターの機能を活かして電話での接客対応もより充実させたいし。楽しみがいっぱいです。」
「成長」の絶対公式 = 個人の意欲 × それに応える環境
中途採用も多いが、新卒採用も40名前後。全社員数の約1割を占める。
これからの『オールコネクト』を担うべき期待する人材像を尋ねた。
「成長意欲…何よりも肝心です。スキルを磨きたい。新しいことに挑戦したい。今の自分に満足しない。未知のことでもおもしろがる。自分が変わっていくことを楽しいと思う。それが状況変化への強さに直結するはずです。今の社会やどんな企業にも絶対の安定なんてありません。だからこそ先の通り、自社としても実力をつけることをずっと優先してきました。成長のための場は絶えず用意されています。間違いなく貪欲な意識に応える風土だと思っています。」
「学生の時期からも、いろんな人と会うことを薦めたいですね。井の中の蛙…とも揶揄されますが、その中でどれだけ高いレベルを体感するか、どれだけ優秀な人と一緒にいるか、これが大事です。自分のインターンシップの時の体験談もそのひとつです。できれば、社会人…それもトップの人と付き合うと視座がすごく上がります。会うのは数か月に一回でもいいから、とにかく尊敬できると思える人がひとりでも持てるか。必ずいい刺激になるし勉強になるはずです。」
多感な学生時代に感じたこと、体験したことが、今の事業に強く継承されていることも伺える。
取材の最後に「座右の銘」を聞くと、首に掛かったネームカードを見せてもらえた。
『誰のせいでも自分の人生』
「例えばですが…雪で遅刻してしまったとします。でも、これをあくまで雪のせいにしていたら、それ以上の行動はしない。自分のせいだと思ったら、次はそうならないことを考える。これまでと違う新しい行動が生まれます。誰であれ、結局は人生は自分のもの。自分の人生なんだから、全てに対して自らアクションを起こしていかないと…そんな意味です。」
「社員全員が同じように座右の銘をカードホルダーにしたためています。自分が大切にしたいと思うことをきちんと持つこと。そしてそれを自分で毎日意識すること。小さなことですが、すごく大きなことだと思っています。」
ユーザーを笑顔に。社会をにぎやかに。岩井社長の外に放つベクトルは太く強い。そしてそれと同じくらい強いベクトルが、社内にも自分にも向けられている。
成長を願う。成長を課す。
『オールコネクト』は、今日も「にぎやか」だ。
企業公式サイト http://www.all-connect.jp
採用情報ページ https://recruit.all-connect.jp